学力が伸びない理由

「学力」が落ちたとき

これまでの人生を振り返って、テストの点数が大きく落ちたときが2度ありました。

1度目は、日本一自由と言われる「きのくに子どもの村学園」から地元の小学校に戻ったときです。「きのくに」では、計算・漢字ドリルなどの作業系の勉強はしませんでした。ほとんどが農作業や工作といった実体験をもとにした勉強です。反復練習や暗記を行わなかったため、みんなが習うような漢字は書くことも読むこともできませんでした。「きのくに」に在籍していたのは短い期間でしたが、地元の小学校に戻って受けたテストは悲惨な結果が続きました。テストを受けるたびに、「『きのくに』でいったい何を学んだの?」と聞かれているようで悲しくなりました。「ちがう。ぼくはしっかり学んだんだ」と自分に言い聞かせ、泣きそうになりながら学校のドリルを何周も勉強し直したのを覚えています。

2度目は中学2年生の半ばです。中学入学以来、真面目に続けてきたテスト勉強をきっぱりと辞めました。思考を伴わない暗記と忘却の繰り返しに儚さを感じたためです。試験勉強は時間の浪費だと判断しました。1ヶ月後には忘れているであろう、細々した用語を無理して覚える気力が湧きませんでした。学校の先生は私の「学力」が突然低下したことに驚いたでしょうが、試験勉強の重圧から解放された私は爽やかな気持ちに包まれていました。学校の成績とは関係のない自分の勉強に身が入りました。

いずれも見かけの「学力」は落ちたことになりますが、私が目指していたのは真の学力だったのです。

学力が伸びない理由

そもそも学力とは何を意味するのでしょう。

世間的には、テストの点数と同義に扱われることが多いと思います。ただ試験問題は決められた範囲を暗記・学習すれば、誰でも正解できるものが大半です。批判的に言えば、テストの点数は、「暗記量と従順さ」を数値化したものに過ぎません。

また、「学力が伸びる」とは、テストの成績順位が上がることを意味することが多いです。順位は相対評価ですから、他人より高い点数を取らない限り、順位が伸びることはありません。勉強しても伸びないのは、周りの人よりも勉強量や熱意が足りないか、勉強方法を間違えているか、のどちらかです。

一般に、学力という言葉は「学習内容の理解度を試験によって数値化して現したもの」と広く解釈されています。ところが、先述の通り一般的なテストは暗記と反復練習によって得点できるものがほとんどです。たとえ学習内容を理解していなくても、同種の問題を繰り返し演習し、パターンに習熟すれば、試験問題を解けるようになります。ですから、テストで高得点をとったからといって、思考力や論理力が身についているとは限らないのです。テストではごく一部の能力しか測ることができません。

私が希望と期待をこめて表現するなら、学力とは「自分で学びとる力、そして他のことに応用する力」です。授業や与えられた宿題など他律的で受け身の学習をしているだけでは、本当の学力が伸びることはありません。受動的な学習では、自律性や自立性が失われ、ますます学力が低下するだけです。

学力を伸ばす方法

学力を伸ばすには、2つの方法があります。

  1. 勉強量を増やす
  2. 自分に合った方法を見つける

習い始めたばかりのときやなかなか理解できないときは、勉強量を増やすと良いです。この勉強量とは、勉強時間のことではなく、問題量を意味します。例題→類題→基本問題→発展問題の流れを意識して勉強することで、基礎から応用力まで無理なく身につけることができます。

解く問題は自分の理解度に応じて選びます。発展問題が難しい場合は、例題〜基本問題を何度も繰り返し解くと、基礎学力が身につきます。基本が大方理解できている場合は、発展問題を中心に演習してどんどん先へ進みます。また、反復して同種の問題を解くことで、解法や考え方のコツが習得できます。

しかし、ここで終わるのはもったいない。

この勉強法に慣れてきたら、自分なりに学習方法を工夫してみましょう。まず、自分で学習計画を立てたり、1日の過ごし方を紙に書き出したりして、実行していきます。人はそれぞれ性格も能力も異なりますから、いろいろな方法を試すことが大事です。時間をかけて様々な練習を試みていると、自分に合った勉強法を見つけることができます。

とにかく自分で工夫して学ぶべきです。他律的な勉強の比率を下げるため、単純作業系の宿題は、早めに終わらせた方が良いです。これに加えて、授業の復習をこまめに行ったり、自分で決めた教材を解いたりすると、学力は飛躍的に伸びます。

本記事は、毎月発行している「学心だより」の抜粋文です。期間限定で公開いたします。

この記事を書いた人

学ぶ楽しさを伝えたい。
自分で学べる子どもたちを育てたい。
2022年春に新規事業立ち上げ。教育で貢献します。